産業排水処理に適したMBR
MBRは中小規模の産業排水にきわめて好適な排水処理プロセスです。以下の特長があります。
・固液分離を膜で行うので、処理水質が極めて良好。
・微生物濃度を高くできるのでその分処理速度を高めることができる。→省面積。
・極めて長いSolids Retention Time (SRT, 汚泥滞留時間)での運転が可能、これにともない、増殖速度の低い細菌群を系内に保持することができる。→難分解性有機物を高度に分解。
・微生物濃度が高いのでより多様な場が形成される(汚泥表面は好気、内部は通性嫌気)ので豊かな微生物生態系が構築できる。→難分解性有機物を高度に分解。
MBRの歴史
1980年代後半から1990年代に日本で開発が進みました。アクアルネッサンス’90という通産省の大型研究開発プロジェクトがあり、これがその後の日本における膜分離技術の進展の大きな契機となりました。当時5年間で120億円が投じられました。その後日本で多くの膜メーカーが出現し、世界中で存在感を示すことになりました。
MBRの社会実装は2000年代に入ってからです。欧州や中東でMBRが数多く採用されました。
MBRのプロセス設計
原水水質、水量、処理目標を定め、処理プロセスを選定します。前処理に物理処理、化学処理が必要な場合があります。プロセス構築して物質収支を取り、機器のサイジングを行います。
処理効率、機器コスト、運転コスト、運転の容易さ、安全性、汚泥排出や臭気についての検討を行います。定修時にのみ排出される排水についての検討も重要です。
生物槽の大きさ、ブロワ容量の決定、膜の種類や数、散気装置の選定が大きなポイントとなります。
(参考情報:Geminiが推奨した排水処理フロー検討要素、プロセス選定の基礎)
2025年のMBR展望
最近まで、ESG投資やSDGsの流れで企業の環境対策の見直しが行われてきました。対応すべきアクションも明快になってきたことでありましょう。トランプ時代になってESGの開示対応や認証対応は減衰、また炭酸ガス排出対応のアクションは真面目にやる空気感ではないように思います。でも水分野のアクションは残ります。2030年に向けて、水分野の実務が大いに進展することと考えられます。
現在、大手の水処理のエンジニアリング会社は半導体産業向けが多忙で小さな工場排水処理の仕事にまで手が回りません。中小水処理エンジニアリング会社にとって千載一遇のチャンスです。
海外で工場を操業している日本企業の工場もそろそろ本格的な対応が求められることでしょう。大いにビジネスチャンスが出てきます。
当事務所では、水処理膜を用いた産業排水処理のプロセス設計支援、各種ビジネスコーディネーション、海外展開支援のサービスを行なっています。
何なりとご相談くださいませ。